「絶対性に近づきたい」 | 大方由希の情熱

2018年3月12日、MYNOR Mediaの新シリーズ「葛藤」で取り上げたいと思い、大学で哲学を専攻している大方由希にお話を聞きました。


今回のインタビューで出来上がった記事は、やはり文字数も熱量も大きくなってしまいました。そのため、大方由希の人生の軸について語る「情熱」その軸を持っているが故に感じる違和感について語る「葛藤」の2つに分けて記事を投稿します。


大方由希 国際基督教大学 3年 (2018.3.12)


大切にしている軸

(聞き手:クライブ)今回「葛藤」という新しいシリーズでの最初のインタビューを大方にする事になったけど、就活の話をしていて「あ、葛藤してるかも」っていう話をしてたよね。どんな風に就活を進めていて、葛藤を感じた? 


私には世界には絶対的な存在があると思っていて、「絶対性と一体化したいし、それによって得られるのが美しいという感情である」と思っているのね。それが私の人生の軸でもあると思う。


それで、その絶対的な存在に私は美という観点からアプローチしたいと思っていて、ファッション系の企業を受けている。でも、この私の軸ってやっぱり言葉で伝えるのは難しいじゃん。 


企業に入るためには、私はこういう人だという事を伝えなきゃいけない。でも、私はこれまでの大学3年間基本的にずっと哲学と宗教の事を勉強していて、世界理解を何度も改めて改めて、今4年生になろうとしている。その中で人に分かってもらう事を第一目的としてこなかったの


人に分かってもらうというよりは自分の中で落とし込める事を目指してる。学問的には正しくない姿勢かもしれないけど(笑)

私の中の感覚的な所で納得していたような世界観とか人生理解というのがあって、それを誰にも共有しようと思って生きてきていない


だから、今就活で「大学で頑張ったことは何ですか」とか「あなたが直面した困難はなんですか」と分かりやすく説明しろと言われても、面接官に分かりやすく伝えるために大学3年間を生きてきたわけじゃないから、自分の人生理解だったり世界観を説明するっていうのが難しい。


というか、そもそもしたくない






絶対性との一体化

 大方が言っている絶対性と一体化するってどういう意味なの? 


私は「世界の核」というものがあると思う(笑) 

私が言う核っていうのは、それこそ宗教で言う神だったりするし、プロティノスっていう古代ギリシャの哲学者の事を借りると一者っていうもの。本も読んだものの完全には理解できなかったんだけど、一者からエネルギーみたいなものが流れるんだって。 


要は世界の源的なものがある。神的概念とも言えるし、それを私は世界の核・または絶対性って呼んでいる


それで、西田幾多郎という日本の哲学者が説明している「純粋経験」ていうのがあるんだけど、例えば、夕日を見てうわぁっていうすごい感情を経験した時に、自分がそれを経験しているのではなく、そういった経験の中に含まれている、一体となるみたいな事を説明している。 



その「純粋経験」に私が言う絶対性と一体化するっていうことがすごく似ているように感じる。

つまり、私が「絶対性と一体化する」って呼んでいる体験は、私に理屈を超えた強い感情を与えてくれるもので、この時に得られる感情を「美しい」って呼びたい


この体験を追い求めるために私は生きていると言っても過言ではない。生きる第一目的みたいな。 


その絶対性を美という観点で解明したいって事?表現したいって事? 


解明というか、絶対的な”もの”に近づきたい。きもいことを喋ってるね(笑) 






 絶対的な存在


なんて言うんだろうな、自分が絶対的な”もの”を眼差しているのではなく、絶対的な”もの”にも眼差されているような経験を、多分誰しもが経験した事があると思う。


ない? 


ない! 


 あれ?(笑) 


だから、大方がどういう経験をして絶対性を感じたり、絶対的な”もの”に眼差されているって感じたのかを知りたい。 


私にとっては、それが偏在しているの。例えば、サンバを演奏している時、ダンスしている人もいれば、違う楽器を演奏している人もいて、私はヘピニキっていう太鼓を演奏しているんだけど、その中でわけが分からない程音がぴったり合ったりするのね。 


その音の波に自分もどんどん乗ってるしでも飲まれているし、これは一体なんだ!というようなよく分からない感覚に飲まれて、それはものすごく快感だし、それこそトランス状態



その状態が、私にとっては絶対性との一体化であり、すごく美しいものだと思う。 


それで、そういう状態になっている時に感じる感情の源が世界の核だと思う。 


私は衣装作りや素敵なドレスのくびれの美しさに絶対性を感じたりもする。 

例えば、美しいドレスの美しい部分が、全体として完璧なバランスを実現させているということに、作った人の意図を超えた「絶対的存在」の力みたいなものを感じる事がある。


そういう風に絶対性が「顕現」して、それに対峙する時にこちら側には「美しい」という感情が生まれてくる、みたいな。私は「美しい」ってそういう事だと理解している。 



ああ、ちょっとわかったかも。自分の場合、それを「共鳴」って呼んでて、人とこうして話してる時に使う言葉なんだけど、共感のさらに上の状態。もう魂と魂が同じ振動をしてる時を「共鳴」って呼んでる。

自分にとって共感ていうのは言葉を通してするもので、MYNOR Mediaでも共感を引き起こす物語りをオーセンティックストーリーと呼んでいて、言葉を使って共感を広げる事で人々を繋ぎたいと思ってる。

でも、「共鳴」っていうのは言葉のレベルを超えて「わかる」っていう感覚が高ぶった状態。だからトランス状態というか目に見えない何かと一体化しているっていうのは自分の言う「共鳴」に少し近しい所があるのかも。 


確かにそうだね。それで私は美という観点でその絶対性に近づきたい。


だから、絶対性と近づく機会を求めて、服を作る事を通して自分の思いを込められるような表現が出来る仕事に就きたい。 


「絶対性が顕現する」ようなものを自分の手で作り出す、っていうことが、わたしにとって「絶対的存在」に近づくための努力なのかなと思う


報われるかどうかは別としても、有限な存在であるわたし(たち)には、それくらいしか出来ることはないのかなって、ポジティブにそう思ってる。そのための手段は、人の数だけ色々あるんだと思う。 


クライブの言うように人との対話でそれに近づけるように感じる人もいたり。


それで今回就活とかがあって、わたしの今後の人生をどうするか考えた時に、わたしは職業として自分の手で「絶対性」に近づける機会を沢山得られるような仕事をしていきたいと思ったのね


自分の今までの経験とか、現実的にビジネスとして出来そうなことを考えたら、わたしには「服作り」なんじゃないかなって思う。




編集後記

「絶対なものに近づきたい。」

そう聞くと瞬時に自分には馴染みがないものと感じてしまいます。


しかし、彼女の具体的な体験談や世界理解について耳を傾ければ傾けるほど、少し「分かった」気がしたと同時に、自分もそのような体験をしているのかもしれないと気づかされました。


『絶対性が顕現する』ようなものを自分の手で作り出す、っていうことが、わたしにとって『絶対的存在』に近づくための努力なのかなと思う。


そう語る彼女の眼にはどんな世界が映っているのだろう?と、想像を巡らせずにはいられませんでした。



後編の「葛藤」はこちら




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